交通事故コラム

後遺障害等級「併合5級」の内訳・併合→相当→併合

2018.03.18

ご本人様より特別に許可を戴き掲載しております。
許可無き転載・転用等は固く禁じます。

提出の医証および再調査結果等により、検討の結果、
1,左肩関節運動可動域低下について、左上肢画像上、左上腕骨に骨折像が認められ、今回の交通外傷後、右肩関節運動可動域の4分の3以下に制限されていることより、自賠責上の後遺障害第12級6号に該当するものと判断します。

2,左肘関節運動可動域低下について、今回の交通外傷後、右肘関節運動可動域の2分の1以下に制限されていることより、自賠責上の後遺障害第10級10号に該当するものと判断します。

3,左手関節運動可動域低下について、今回の交通外傷後、右手関節運動可動域の4分の3以下に制限されていることより、自賠責の後遺障害第12級6号に該当するものと判断します。

4,上記1,2,3は併合の方法により第9級相当に該当します。

5,左手指可動域低下について、今回の交通外傷後、「1手の5手指の用を廃したもの」と捉えられることより、自賠責の後遺障害第7級7号に該当するものと判断します。

6,上記4よ5は併合の方法により第6級相当に該当します。

7,左座骨神経痛との訴えについて、今回の交通外傷後、「左下肢にがん固な神経症状を残すもの」と捉えられ、自賠責上の後遺障害第12級12号に該当するものと判断します。

8,左足関節運動可動域低下について、左股関節脱臼骨折後、左足関節拘縮により、参考可動域の4分の3以下に制限されていることより、自賠責上の後遺障害第12級7号に該当するものと判断します。

9,右足関節運動可動域制限について、右股関節脱臼骨折後、右足関節拘縮により、参考可動域の4分の3以下に制限されていることより、自賠責上の後遺障害第12級7号に該当するものと判断します。

10,上記6,7,8,9により、併合第5級とします。

11,右股関節および両膝関節運動可動域制限について、それぞれ、左股関節運動可動域および膝関節参考可動域の4分の3以下を超えていることより、自賠責上の後遺障害には該当しません。

後遺障害の等級の内容を考察

まず、手書きというのが珍しいです。

手書きのものがあるのは事実ですが、
これだけの長文というのは極めて珍しいです。

珍しい併合→相当→併合

同一系統の後遺障害等級は、一旦、併合の方法で「相当等級」がつけられます。
本件の場合、左肩・左肘、左手(手首)に後遺障害等級がそれぞれ認定されました。
それらが同一系統の後遺障害であることから、左腕全体(肩から手首)に対して9級という相当等級が付けられました。

次いで、左手指に7級7号が認定されたことから、
左上肢全体(肩から指先にかけて)に対して、
先の相当9級と7級が併合され、
6級という相当等級がつけられました。

そして、他の部位にも13級以上の後遺障害等級が認定されたことから、
先の相当6級と併合され、併合5級という後遺障害等級が認定されました。
最終的には併合5級です。

複雑怪奇な認定方法に戸惑われるでしょうが、
実は基本に忠実な認定に過ぎません。

同一系統の後遺障害等級には相当等級がつけられるという基本通りの認定です。

珍しい最重度等級

脳損傷や脊髄損傷という中枢神経の後遺障害をのぞき、
外傷で5級というのは最も重い後遺障害等級です。

これ以上重い認定は、多くのケースで調整が働き等級を下げられます。
調整の理由は主に、「切断した場合と比較し、それより重い後遺障害等級にはできないから」というものです。

これには賛否両論ありまして、
賛成派は「切断以上に重い後遺障害はない」と言い、
反対派は「機能障害や痛みの原因を抱え続ける方が辛い」と言います。
賛成派の言い分はもっともです。

ところが、反対派の言い分にももっともな点があります。

特に、反対派の言い分を支える根拠として、
重度のCRPS(難治性疼痛の一種)があります。

CRPSの痛みは相当酷いものらしく、心から「切断した方がまし」と思えるものだそうです。

全てのケースでCRPSやそれに匹敵する痛みを抱えるわけではないので、
おおかたのケースで賛成派の意見に賛成です。

しかし、特殊なケースも適切に評価されるのが理想ですから、
ケースバイケースの認定が求められます。

そして、結局、基本に戻ります。
つまり、専門医による診断や、証拠能力の高い検査結果の重要性に回帰するということです。

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